建白書
南海・東南海地震による大津波対策、紀淡海峡津波防潮堤
大阪市住之江区新北島ファミリートーク新北島
加治屋直喜
要約
2011年3月11日の東日本大震災以降、近畿各地でも、防災の気運が高まっている。
しかし、200kmを越す海岸線を有し、200万とも300万言われる湾岸住民にとって、
津波の危険にさらされていること自身が大問題である。今回、その想定される大津波の規模
などの議論とは距離をおいて、そもそも大津波を阪神地区[伊勢湾]に到達させない、方策
について考え提案を試みる。すなわち、紀淡海峡津波防潮堤の提案であり、紀淡連絡道路・
関西大環状道路整備である。
もくじ
1)大阪湾の構造
2)津波の水量概算
3)津波堤防の位置と規模
4)紀淡連絡道路・関西大環状道路
5)マイナス面
最後に 東海地震・富士山噴火→東京機能停止 = 関西・中部の絶対的温存
[図 1]国土地理院 | ![]() |
1)大阪湾の構造
大阪湾、北は明石海峡、南は紀淡海峡で区切られた大変閉鎖的な水域である。[図1]
想定されている東海・東南海・南海の地震による津波は、淡路島の東側である紀淡海峡
を主に通過する。西側の鳴門海峡は瀬戸内へ抜ける。紀淡海峡を通過した津波は、大阪湾
を北東または、淡路島反射してやはり東へ進む、大阪港ではほぼ西の方角から、しかも、
海域[中央部30m、関西空港西側20m、大阪湾入り口10m]は次第に狭くなり、
水深も浅くなり、ほとんど大阪市を中心に被害をもたらすと考えられる。
(参考 東大古村教授)
紀淡海峡は、主たる水道である友が島水道(由良瀬戸)、沖ノ島、中の瀬戸、地の島
と加太の瀬戸と呼ばれる水道からなっている。[図2]
友が島水道(由良瀬戸) 4.7km 中の瀬戸 500m 加太瀬戸 800m
大潮のときの最大流速は由良瀬戸で北向きに約3.6ktである。(ウィキペディア)
国土交通省水路部の地図から拾い読みすると、友が島水道(由良瀬戸)は水深150m
長さが2.8kmの逆さ台形と考えてよい。
[図 2]GoogleMap | ![]() |
2)津波の水量概算・・・シュミレーションが目的ではない
[A]津波の速さ
速さ=√(水深 × 重力加速度)・・・波長が水深よりはるかに長い場合
=√(40m ×9.8m/秒2) 実際は水深150m(39m/秒)であるが、
水道の手前が浅く、流量は減じている
= 20m/秒 時速72キロ 40ノット (大潮の11倍)
[B]由良瀬戸を通過する水量 15分として
水量 = 速さ × 断面積 (上辺+底辺)×高さ/2深さは40mとした
= 20m/秒×((4700m+2800m)×40m/2)×900秒
= 2700000000m3 [ 1辺1.4kmの立方体 ]
※ 大阪湾の面積は1450km2 でその半分が 山、残りが谷になるから
高さ = 2700000000m3 / (1450000000m2 ÷ 2)
= 3.7m 大阪湾中央部の大まかな津波の高さ この場合、湾岸部の
津波の高さは2倍として7mになる。 (関西大学 河田教授は5.5mで試算している)
[C]浸水量 海岸線200km 4mの水が襲ってきたとして
4mの浸水域 = 2700000000m3 / 200Km / 4m
= 3.4km 2mの浸水なら7kmだ
3)津波堤防の位置と規模
2)津波の水量概算が正しいかどうかは、本文の目的ではなく大津波が、由良瀬戸を通過
する水量にだけに由来することを示している。
津波の高さに対して堤防の高さをかさ上げすることは最初から限界がある。200kmを
超す海岸線のかさ上げだけでなく、大阪港などは、港であるから、船の着岸を前提とする
から、かさ上げ自身が不可能である。現在、大阪市住之江区でも津波に対する避難訓練が盛ん
に行われ、私自身もこの避難訓練の企画に関わることから、この対策をレポートしている。
今の岸壁、堤防では、4m位まで防衛できる。しからば、津波の高さを4mに抑えればよい
わけである。由良瀬戸を通過する水量を3分の2に抑えれば、目的を達することができる。
方法としては、
①加太瀬戸、中の瀬戸を封鎖する。
②由良瀬戸の水深を150mから有効な水深50mにまで埋めてしまう。
③由良瀬戸4.8kmの両側を狭めて中央部2.8kmにする。などの方法がある。
①と②の併設 ①と③の併設 ①・②・③の併設

4)紀淡連絡道路・関西大環状道路
紀淡海峡を狭めることは、国防の観点、関西新空港第1・2滑走路の津波防災、和歌山・
四国・兵庫淡路の経済発展など七色の未来を関西圏に実現する礎になる。
1.国防の観点として、さきの大戦を省みても、この海峡を常時管理することは至極当然
である。
2.大津波による被害の中で、関西新空港については、深刻である。一時の津波のために
長期間、空の玄関を閉ざすことは決して許されるものではない。また、空港の津波対策に
かかる費用捻出は現在の経済状況から、考えられない。
3.関西新空港を中心に関西圏の経済再構築を論じる時、空港と四国・淡路島との距離の
短縮は必須である。紀淡連絡道路・関西大環状道路は、関西空港と徳島を1時間強で結ぶ
ことを約束している。愛媛県松山また、高知までをも3時間で結ぶ。これは、大津波に
よる高知・徳島の復興の動脈としても、国防の範疇といえる。
4.また、多大なるコンクリート(ケーソン)を海底に投入することになる。本来この
ケーソンには、岩石などを入れ、そのまま沈めるわけだが、現在行き場の無い、放射性
焼却灰をコンクリートで固め、この礎石とすれば、数百年の長期にわたり、海底に眠ら
せることができる。セシウム等の半減期を優に越す安置場所にもなる。
5.加太から中の瀬戸までを封鎖することができたなら、そこに発露する広大な埋立地
は、あらゆる用途が考えられる。例えば、米軍事基地の誘致ですら可能である。大阪、和歌山
からは見えない。
紀淡連絡道路・関西大環状道路の構想は、以前から地元和歌山、徳島で提唱されていた懸案
である。私はただ、その機能として、大津波に対する防潮堤を加味することを提案するもの
である。
5)マイナス面
加太は以前から水産業の町であった。[漁業保障]しかも、瀬戸内海国立公園で形勝明美な
場所でもある。ただ、和歌山や大阪側から埋立地は、隠れて見えない。逆に、明石海峡大橋が
そうであるように、地形に溶け込んだ構造物であることを望む。また、環境に対する影響、環境
アセスメントに言及するべきは当然である。
![]() http://www.kitan-renraku.com/whatskitan.htm | ![]() |
最後に
地震・富士山噴火→東京機能停止=関西・中部の絶対的温存
この発想は、伊勢湾でも考えられる。鳥羽と渥美半島の海峡の中央に神島がある。ここまでの
対津波防潮堤を築けば、伊勢も安泰である。東京湾において、浦賀水道の富津岬沖を狭めることは
議論の余地がある。
もし、東海地震が発生、富士山の再噴火に及んだ場合、東京は6ヶ月以上機能を停止する。この
ことは、宝永地震・噴火で判っている。したがって、大阪・名古屋の無傷、温存は必然の国策となる。
願わくば、次の大地震、大津波の来る前に対策がとられることを切に願いつつ。
余談
http://tatevision.blog34.fc2.com/blog-entry-406.html '11.9.23 放映 ABCテレビ
『古文書が語る巨大津波』感想 番組では1361年の正平南海地震に注目する。奈良の法隆寺。ここに一冊の古文書がある。「斑鳩
嘉元記」。大阪を襲った津波の記述が残されている。
四天王寺金堂が壊れ倒れた また安居殿御所西浦まで潮が満ちて
その間の家の人々が たくさん亡くなったということだ
四天王寺は現在とほぼ変わらぬ規模であった。安居殿御所西浦とは、四天王寺から坂を下ったところにある、今の安居神社ではない
かと考えられる。天王寺の辺りまで津波が来たことになる。
海抜8m[GooglMap] 多くが6mから9mと解しているようだ。(津波の高さ?)
ただし、安居殿御所西浦と安居神社との関係の証拠がないのも事実